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逆転裁判2考察-残された遺書の謎と真の犯行動機-

※本記事は逆転裁判2第4話に関する重大なネタバレを含みます。未プレイの方は閲覧しないことをオススメします。

1 はじめに

本記事では、逆転裁判2の第4話において、事件のカギを握っていたものの、とうとう最後まで明らかにされなかった由利恵の遺書の内容を、作中の登場人物のセリフや証拠物等から考察する。

その上で、作中では立証されなかった王都楼の真の犯行動機を推察する。

ネット上では「王都楼はクズだ」という評価が多数見受けられるが、この考察を通じて、実は王都楼にも同情の余地があるのではないかという一説を示したい。

2 霧緒が語るストーリー

(1)ストーリーの内容

この手の検討では客観的な証拠を先に検討するのがセオリーと言われているが、シナリオを忘れてしまった人にもある程度分かるよう、本記事では敢えて華宮霧緒(証人)の供述から検討しよう。

シナリオ上、具体的な事件の背景事情や遺書の内容、王都楼の犯行動機については、唯一、霧緒のみが詳細に説明する。

霧緒の語るストーリーは次のとおりである。

・王都楼(犯人)は昔、由利恵と付き合っていたが、由利恵を散々もてあそんだ末に捨てた。
・由利恵は王都楼のマネージャーという立場でもあったため、王都楼のスキャンダルのもみ消しとして、王都楼が所属する会社から藤見野(被害者)が所属する会社に移籍することとなった。
・その後、藤見野と付き合って婚約までしたが、そのタイミングを見計らって王都楼がライバル関係にあった藤見野に対して、由利恵が自分の元恋人であることを暴露し、藤見野は王都楼に対するプライドから由利恵との婚約を破棄した。
・これに絶望した由利恵は自殺した。
・由利恵は死ぬ前に遺書を遺しており、そこには王都楼に酷い仕打ち(もてあそんで捨てられた上に藤見野との結婚を妨害されたこと)を受けたことが書かれていた。
・由利恵の自殺の第一発見者である藤見野は、遺書を発見したが王都楼の決定的な弱みになるため遺書を隠し、王都楼を失脚させるために、王都楼が最もダメージを受けるタイミングで遺書を公表しようとしていた。
・と、藤見野から聞いた。
・事件当夜に藤見野が遺書を公表しようとしていたことを知った王都楼は、遺書を回収するため殺し屋を使って藤見野を殺害し、遺書を回収したに違いない。

これだけ聞くと、王都楼はとんでもない奴だという感想を持つのも自然である。

しかも、王都楼は、由利恵の死の真相や遺書の内容について何らかの反対ストーリーや弁解を述べることはなく、弁解を述べるどころか急に悪人面になって、犯行を認めて開き直った態度を取るようになる。

プレイヤーとしては、霧緒のストーリーを覆す事情が(最後の尋問の時点まで)なく、王都楼の態度に対する怒りも相まって、霧緒のストーリーがもっともらしい「真実」であると考えることになる。

(2)検討

しかし、よくよくこの霧緒の供述を分析してみると、全て霧緒が直接体験した経験に基づくというわけではなく、藤見野から聞いた話や霧緒の想像が混在しており、内容的にその多くは藤見野から聞いた話で構成されていると考えられる。

そして、藤見野が霧緒に言っていたことが正しいのか、ウソをついていないかを検討してみると*1、まず、以下で検討するとおり上記のストーリーには重要な部分で客観的な事実に反する(「証拠とムジュンする」)ところがある。

しかも、上記のストーリーは全て王都楼の悪行を示す王都楼に不利な話であるところ、そもそも藤見野は王都楼とライバル関係にある上に、以下のとおり偽の遺書を使って王都楼を失脚させようとしていたのであって、藤見野が王都楼を貶めるストーリーをでっち上げて、ウソをつく動機も十分にある。

こうして冷静に見ると、上記のような霧緒の(というか藤見野の)ストーリーはかなりあやしい(供述の信用性に乏しい)ことが分かるだろう。

では、いったん霧緒のストーリーは脇において、他の証拠から遺書の内容等を検討してみよう。

3 遺書の内容

(1)シナリオの確認

霧緒が上記のような話をした後、実際に藤見野が公表しようとしていた遺書が発見されるが、筆跡鑑定の結果、その遺書はまさかの藤見野により偽造されたものであることが判明する。

しかし、遺書の話はそれ以上追及されることなくそこでおしまい。話題が変わってそれ以降、遺書の話は登場しないため、本物の遺書の内容はうやむやになったままゲームはエンディングを迎える。

そもそも、由利恵が遺書を遺したことを示す直接の証拠はないため、由利恵が本当に遺書を遺したのかということ自体も本来問題となり得るのだが、シナリオ上、誰もこの点を争わず、由利恵の遺書があったことを前提に話が進むため、とりあえず由利恵は遺書を遺したということにしておこう(一応、検事みっちゃんは、由利恵が遺書を遺したと考える根拠として、由利恵の死体発見時に由利恵の手にインクがついていたことを挙げ、なるほど君もこの理由で納得していたが、これだけで本当に遺書があったことを証明できているといえるかはかなり疑わしいだろう)。

(2)検討

さて、本題に入ろう。

まず、藤見野は、「王都楼が由利恵に酷いことをした」という内容の遺書を偽造したが、本物の由利恵の遺書に王都楼の悪行が書いてあるのであれば藤見野は敢えてこのような遺書を偽造する必要はないため、本物の遺書にはそのような内容は書かれていなかったと考えられる。

そして、本物の遺書に王都楼の悪行が書かれていない以上は、「藤見野は、遺書が王都楼にとって決定的な弱みになるため隠した」というストーリーは成立せず、藤見野は別の目的があって遺書を隠したということになる*2

別の目的とは何か。由利恵に対する純粋な嫌がらせということもあり得なくないが、遺書に藤見野にとって不利なことが書かれていたため隠したと考える方が素直だろう。

実はこの点、王都楼と由利恵が所属していた事務所の俳優の荷星が、藤見野が遺書を隠した理由について、「ボク、思うんですよ。遺書の中に、ツゴウの悪いことが書いてあったんです!…イサオさん(藤見野)にとって。」と述べて、同じような推論をしている。

荷星はそのように考える根拠として、由利恵が亡くなる前に「ワルいオトコにつかまってしまった」と友達に相談していたことを挙げ、「ワルいオトコ」=藤見野であると推察する。

その直後からのシナリオの流れにより、荷星の推論は忘れ去られ、「ワルいオトコ」=王都楼という構図が出来上がり、プレイヤーはこちらに引っ張られるような展開になっているのだが、由利恵が亡くなる前、すなわち王都楼ではなく藤見野と付き合っているタイミングで相談していること、及び遺書に王都楼の悪行が書かれていないことから、荷星の推論通り「ワルいオトコ」とは藤見野のことを指すと考えられる。

そしてこれは、遺書の中に藤見野にとって都合が悪いことが書かれていたことと整合する。

したがって、本物の遺書には、王都楼の悪行ではなく、むしろ藤見野の悪行が書かれていたと認められる。

4 由利恵の死の真相

(1)藤見野の悪行

では、藤見野の悪行とはなんだったのか。これを検討する前提として、王都楼、藤見野、由利恵の間に何があったのかを考える必要がある。

まず、王都楼の部屋に、由利恵の字で「愛をこめて。ユリエ」と書かれた由利恵の写真が飾られていたという事実に着目する。

この事実から、昔、王都楼が由利恵と付き合っていたことと、今でも王都楼は由利恵のことを心に留めている(未練があると言ってもよいかもしれない)ことを推認できる。

また、荷星によると、王都楼は女遊びが激しく、「思い通りにならなかったオンナは1人だけだ」と発言していたという。

荷星は、この王都楼が思い通りにできなかった女とは霧緒のことであると言うが、後に王都楼が、「ちょっとアマいカオすりゃあいい。…チョロいもんさ。霧緒もそう。殺し屋だってそう。」という発言をしていることから、霧緒については思い通りにできた(と少なくとも本人は思っていた)のだろう。

そうだとすれば、王都楼が言っていた思い通りにならなかった女とは、霧緒ではなく由利恵のことであると考えられる。

そして、これらの推認を踏まえると、王都楼と由利恵は昔付き合っていたものの、王都楼の意思に反して由利恵が王都楼をフッたため2人は別れたのだと考えられる。

なお、霧緒のストーリーによると、王都楼は由利恵を弄んだ末に捨てたとされるが、仮にそうであれば、王都楼が由利恵の写真を今でも飾っていること、由利恵が思い通りにならなかったという発言をしたことは不自然であるため、やはり王都楼が由利恵を弄んで捨てたということは考え難い。

このことは、由利恵の遺書に王都楼に酷いことをされたと書かれていなかったことと整合する。

(2)婚約破棄の理由

次に、なぜ藤見野は由利恵との婚約を破棄したのかについて検討する。

事実として分かっているのは、藤見野と由利恵が婚約発表をしたこと、その3日後に藤見野が婚約を破棄したこと、その後、その日のうちに由利恵が自殺したことである。

この点、霧緒のストーリーによると、婚約発表の後に王都楼が藤見野に対して、昔由利恵と付き合っていたことを暴露したため、プライドを傷つけられた藤見野は由利恵との婚約を破棄したとする。

もっとも、上記の検討を踏まえると、王都楼が昔由利恵と付き合っていたことを藤見野に暴露することは考え難い。

すなわち、霧緒のストーリーのように、仮に王都楼が由利恵を弄んで捨てたのであれば、藤見野にそのことを暴露することで藤見野に屈辱感を与えることができるかもしれない(「オレが捨てた女と結婚www」という趣旨で)ので、暴露したという説も筋が通る。

しかし、上記検討のとおり王都楼が由利恵にフラれたのだとすると、昔付き合っていた事実を暴露することは、例えば由利恵が藤見野に事の顛末を話すことにより、藤見野に屈辱感を与えるどころかフラれたという弱みと優越感を藤見野に与えることにつながるため、不合理である。

やはり、霧緒のストーリーはおかしい。

婚約破棄が王都楼のせいではないとすると、その原因はもっぱら藤見野にあると考えるのが自然である。

そして、もっぱら藤見野の都合で婚約が破棄されたことを前提に、婚約がわずか3日で破棄されたことを考えると、そもそも藤見野は、婚約を短期間で破棄することを計画して婚約発表をした可能性が高い。

しかも、藤見野のファンである大場によると、この婚約発表は「それはそれは大げさな」発表であり、仮に敢えて大げさな婚約発表が行われたのだとすれば、この婚約にかかる一連の計画は、藤見野が「藤見野と由利恵が婚約した(=藤見野が由利恵のモノになった)、そして捨てた」という事実を外部に知らしめることに目的があったと推察される。

かつて由利恵と付き合っていたがフラれ、それでもまだ未練がある王都楼がこれを知れば、屈辱感ないしショックを受けることになる。

つまり、藤見野は、王都楼に屈辱感ないしショックを与えるために、由利恵と婚約発表をしてから捨て、これを王都楼に知らしめたのだと考えられる。

これは、由利恵が亡くなる前に「ワルいオトコ(=藤見野)につかまってしまった」と友達に相談していたという事実と整合する。

また、これは、霧緒の(藤見野の)ストーリーをきれいに反転させたストーリーとなっている(王都楼/藤見野が、由利恵を弄んで捨てたことを、藤見野/王都楼に伝え、屈辱感(ショック)を与えた)。

5 王都楼の真の犯行動機

王都楼は犯行動機について、今回藤見野が王都楼に不利になるような遺書を公表しようとしたことをきっかけとして、藤見野が以前から王都楼の前を「ちょろちょろして目障りだった」ことが動機であると述べる。

しかし、これまでの検討を踏まえると、犯行動機はむしろ、藤見野が由利恵を弄んで捨てた上に遺書を隠滅し偽造して、死後も由利恵を自分のために利用したことへの復讐と、由利恵の名を語った偽の遺書を公表される前に自分の手で消したかったという、王都楼に藤見野殺害の罪を着せようとした霧緒の犯行動機*3とほぼ同じものだったのではないかと推察する。

藤見野への復讐という点については、王都楼の部屋に、それも王都楼が、コロシヤ(実行犯)が藤見野を殺害しているところを隠しカメラを通じて見ていた部屋の目立つ位置に由利恵の写真が飾られていたことから、犯行の背景に由利恵への想いがあったと考えられる。

遺書を公表される前に自分の手で消したいという点については、上記由利恵への想いから、由利恵の意思に反する遺書が公表されて欲しくないという気持ちがあったのではないかと推測される。また、わざわざコロシヤに遺書の破壊ではなく、遺書(が入った小物入れ)を回収するよう指示したのは、自分の手で偽物の遺書を消したいという思いがあったからだと推測される。

この王都楼の犯行動機については、供述証拠も含めてほとんど証拠がないため、もはやほとんど推測の域をでないが、筋は通っているのではないかと思われる。

6 おわりに

以上、かなり長くなってしまったが、第4話で残された遺書の謎と王都楼の犯行動機について検討した(かなり長くなってしまったといっても、ところどころで便宜上供述の信用性等の検討を端折っているので、これでもだいぶ分量を削った方ではあるが)。

全体として供述証拠ベースの検討になってしまっており(それも尋問を経ていない供述の)、証拠に基づかない推測も多分に含むため、厳密に考えるとあまり説得的な検討となっていないことは自覚しつつ、そこはゲームの考察ということでご容赦いただきたい。

あくまで推測レベルの考察である。

さて、本記事で検討した内容をまとめると次のとおり。

・王都楼と由利恵は昔付き合っていたが、由利恵が王都楼をフッた。
・その後、藤見野は、王都楼に屈辱感ないしショックを与えるため、由利恵と付き合い、婚約発表までした上で婚約を破棄した。
・これが原因で由利恵は自殺した。
・由利恵は藤見野の酷い仕打ちを書いた遺書を残したが、藤見野はこれを隠した上で、王都楼を失脚させるために、王都楼が由利恵に酷いことをしたという内容の遺書を偽造した。
・藤見野は霧緒に対して虚偽の遺書とストーリーを伝えた(その上で霧緒に、遺書を公表しておおとろを失脚させる計画の協力を求めた)。
・事件当日、藤見野は由利恵の偽の遺書を公表しようとしたが、これを知った王都楼は、由利恵を弄んで2度も自分の利益のために利用したことへの復讐と、由利恵の名を語る遺書を公表される前に自分の手で消すことを動機として、コロシヤに藤見野の殺害を依頼した。

どうだろうか?このように考えると、最初のイメージとだいぶ違って王都楼にかなり同情の余地があるように感じられないか。

この考察の真偽のほどはもちろん不明だが、こんな裏設定があっても面白いだろう。

最後に、本記事がきっかけとなって、もう一度逆転裁判2を遊んでみようかなという気持ちになった方がいれば幸いである。

本記事で引用した画像の著作権は全てカプコンに帰属する。

*1:実はここで検討過程を一段階すっ飛ばしているのだが、そこまで書くと間違いなく多くの読者を混乱させるため割愛した。以下でも、適宜、便宜上検討を省略する。

*2:藤見野が本当に遺書を隠したかということも問題となり得るが、上記と同様に割愛。

*3:藤見野が死亡していることを発見した霧緒は、藤見野が持っていた由利恵の遺書が世間に公表されないよう自分の手で消すために藤見野の死亡した部屋を捜索して遺書を探し、さらに、上記霧緒の(藤見野の)ストーリーに基づき王都楼が藤見野を殺害したと思い込み、由利恵の復讐を果たすために王都楼の指紋が付いたナイフを藤見野の死体に突き刺す等して証拠を偽造し、王都楼に罪を着せた(死体損壊、証拠偽造)。この霧緒の犯行動機については霧緒の口から明確に証言されている。