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ドラクエ9【DS】 考察 -なぜストーリーが「弱い」のか。なぜ転職が3のシステムなのか。等-

 


ドラクエ9【DS】のレビューです。

 

今回は、筆者が書きたいこととの関係で、レビューというより考察記事(といってもストーリーの考察ではなく、ゲームの要素の考察です)となっており、筆者の推測を多分に含みます。もし、どこかで公式から情報が発表されている、或いは筆者の見解とは異なる考えを持っているという方は、ぜひコメント等で教えていただければと思います!

 

伴って、本文中に多くのネタバレを含むこととなってしまったため、未プレイの方の閲覧は非推奨としておきます。

 

本記事がこれからこのゲームを遊ぼうか迷っている方の一助となれば幸いです。

 

 

評価(5段階)

ストーリー ☆☆

システム  ☆☆☆

作りこみ  ☆☆☆☆

サウンド  ☆☆☆☆☆

難易度   ☆☆(クリア後:☆☆☆☆☆)

総合    ☆☆

 

ストーリー

今作の主人公は天使で、天使界が突如攻撃されたことにより地上に落ちた女神の果実を拾い集めつつ事件の原因を探りに行くという物語です。

一般的に主人公のお助け役として登場する天使が主人公であるという設定は斬新ですが、ストーリーの大まかな構成としては王道かつ非常にシンプルで、各地のオーブを集めて魔王を倒す(だいぶ端折っていますが)というドラクエ3とほぼ同じです(もちろん敵の事情等は異なりますが)。

従来のナンバリングでは、気球や不死鳥、空に浮かぶ城などユニークな移動手段が用意され、過去の世界や夢の世界などワールドマップが複数存在し、それらがストーリーの展開と上手く交わることで、他のRPGでは体験できない世界観や展開、面白さが作り込まれていたように思います。しかし、今作では、ラスボス撃破までの(プレイヤーが自由に操作できる)移動手段はただの船のみであり、ワールドマップも1マップしか用意されていません。そのため、ストーリーの内容としても、特段大きな展開を迎えることもなく、従来のナンバリングで体感できたような感動がない冒険になってしまっていたことがかなり残念でした。

今作のパーティーメンバーが主人公を除いてストーリーに一切関与しない無個性キャラであることも、ストーリーの内容が薄弱になっている要因であると考えられます。

また、訪れることのできる街の数も従来のナンバリングに比べてかなり少なく、伴ってメインストーリー自体が短く(ドラクエは原則街ごとに1つのストーリーが展開されるため)、全てのイベントがその街の周辺だけで完結するようになっていたことも相まって、全体としてあっさりとしていたように感じました。現に、筆者のクリアまでの総プレイ時間は約40時間であり、しかも錬金の素材集めやサブクエなどメインストーリーとは関係のないことに相当な時間を費やしていたため、メインストーリーのボリュームは他のナンバリングと比較にならないほど少ないのでしょう。

 

こうしたストーリーの「弱さ」は、そもそも今作が「友達と通信して一緒に冒険する」ことに主眼が置かれたことが原因であると考えられます。

友達と一緒に冒険することを前提とした結果、キャラは各プレイヤーの個性が出るように無個性キャラにしなければならず、3〜7のような空間や時間のギミックを使った構成を取ることもできず、また、1つの長編物語というよりも複数のクエストの集合体という性格が強い設計を余儀なくされたのではないかと推測されます。

或いは、今作は、モンハンのようにクエストやダンジョン(クリア後の要素を含む)の攻略自体をメインコンテンツとして、ストーリーはあくまで「おまけ」のような位置付けとして設計されていたと考えるのが自然なような気もします(その意味では、ストーリーにも重点が置かれた従来のナンバリングと比較すること自体が誤りであるような気さえします)。

 

製作側の事情はともかく、ストーリーの内容としては、オリジナリティにあふれたドラクエ3〜8以降に出すゲームとしてはあまりに弱すぎると感じました。

 

その他、お助けキャラがガングロギャルであり、その見た目や言動に批判的な意見もあるようですが、この点については筆者は特に何も感じませんでした(ドミールでのイベントで主人公が地上に落ちた際、突然サンディが離脱したことにはかなり違和感を覚えましたが)。

 

システム

基本的には9以前のナンバリングで登場した転職や特技、錬金などの要素をそのまま引き継いでいます。

特筆すべきこととしては、転職システムについて、8で廃止されていたものの今作では復活しています。ただし、6、7の熟練度システムではなく、3の、転職するとLv1からやり直しになるシステムが採用されています。

もともと転職システムについては賛否両論あったようですが、筆者はドラクエの転職システムは攻略の幅、自由度を大きく高める要素として肯定的に捉えています(もちろん転職がない(つまり職業が固定されている)場合にはパーティーメンバーのキャラが引き立つため、転職ありの作品にはない良さがあって面白いですが)。

しかし、せっかく6と7で採用した熟練度システムを放棄し、あえて3のシステムを採用したことには疑問を抱かざるを得ません。

3の転職システムのデメリットとしては、転職するとそのキャラはLv1に戻るため、そのキャラの育成のためにわざわざ弱い敵相手に(場合によっては数時間前に訪れた街まで戻って)ひたすらレベル上げをしなければならず、冒険のテンポが悪くなるということがあります。この弊害を無くすものとして、転職してもそのキャラ自体のレベルは変わらない熟練度システムは優れており、転職してもその都度レベル上げをする必要がなく気軽に転職することができることから、プレイヤーがより積極的に転職システムを活用するようになる点も6や7の熟練度システムのメリットでした。

また、特に今作が「友達と一緒に冒険する」ことをコンセプトに作られたのであれば、友達と同じタイミングで転職しない限り友達間で大きなレベル差が生じることになる3のシステムではなく、熟練度システムの方がコンセプトに親和的であったはずです。

他方、今作では8で登場したスキルポイント制が採用されており、転職するとLv1に戻る仕様を活かして(レベルが上がりやすくスキルポイントを獲得しやすい)転職をスキルポイント稼ぎに使うことができるという点では3の転職システムに分があります。もっとも、熟練度が上がるたびにスキルポイントを付与するというシステムであっても、スキルポイントを稼ぎにくくはなるもののスキルポイント制に対応させることが可能であったのではないかと思います。

 

それでもあえて3のシステムが採用された理由として考えられるのは、

・上述のとおり、スキルポイント制との相性から

・ストーリー構成やBGM等が3と類似することからも、制作にあたって3が強く意識されていた(原点回帰の意味が込められている?)

・熟練度限界は地域ごとに設定されるところ、6や7と比較してマップが小さいことから、熟練度に対応できるほどに地域区分ができず、熟練度システムを採用できなかった

・本格的に転職が活用されるのはクリア後とするという前提の下で転職システムを設計すると、やはり熟練度限界の地域設定との関係で、クリア後の大幅な地域拡大を予定していない以上、熟練度システムに対応できなかった

といったあたりでしょうか(あくまで筆者の推測です)。

 

3のシステムが採用された明確な理由は分かりませんが(どなたか上手く説明できる方がいればコメント等で教えていただければと思います)、この点で転職のしづらさや遊びづらさを感じたプレイヤーも多いのではないでしょうか。

筆者も、Lv1からレベル上げをするのが億劫で、結局クリアまでに1回しか転職しませんでした(主人公をバトルマスターに)。

 

作りこみ

今作はサブクエストの数が非常に多く(DLCも含めると180近くあるとか)、ランダム生成ダンジョンもあるため、やり込もうと思えば何十、何百時間でもやり込めるように作られています。

しかし、ダンジョン内部の構造は非常にシンプルで、従来のダンジョンで見られたような謎解き要素が一切なかった点が気になりました。

加えて、これらの要素はメインストーリーとは直接関係せず、また今作のパーティーメンバーは全て無個性であるため、従来のナンバリングを遊んで感じたような「もっとこのメンバーで冒険したい」という気持ちになれず、あまりクリア後の要素を遊ぶ気になれないというのが筆者の正直な感想です(一応この記事を書きながらじわじわとクリア後のダンジョンを進めてはいますが)。

メンバーが無個性であることに伴って、従来のナンバリングで人気だった「はなす」コマンドがなかったこともイマイチ物足りなさを感じる原因となっていました。

さらに、ドラクエではお馴染みで人気要素であったはずのカジノがなかった点が残念であり、なぜカジノを入れなかったのか非常に疑問です。特に、せっかく友達と冒険できるようにしたのだから、カジノも一緒に遊べるようにすれば間違いなく面白かったであろうと予想されるだけにカジノの廃止は一層謎でした(一部には、DSの容量の問題で入れられなかったとする見解もありますが…)。

他方、ストーリー中一部、数分間のアニメが挿入されており、そのシーンにはかなり力が入っており豪華だと感じました。

また、クリア後要素として歴代のナンバリングのボスと戦えるダンジョンがあり、他のナンバリングを遊んだ人にとっては嬉しい要素となっていました。特に、親子で一緒に遊んでも、親も自分が子どものころに遊んだドラクエを思い出しながら遊べるようになっており、親もしっかり楽しめるように工夫されていた点が良かったです。

装備の種類だけでなく装備できるパーツが多いことも今作の特徴です

 

サウンド

フィールドBGM、戦闘BGMいずれもいつもながらに良いもので、特にラスボス戦では「序曲」がアレンジされたBGMとなっており、非常にかっこよかったです。

また、宝の地図ダンジョン内部も、3のダンジョンBGMとなっており懐かしさを感じました。

 

難易度

上述のとおり今作ではダンジョン内の謎解き要素がなく(もちろん石板もなく)、ダンジョンの規模についても従来に比べると小さいものばかりであることや、完全シンボルエンカウント制であるため好きなタイミングで敵と戦えること、メインストーリー中極端に強いボスもいないことから、メインストーリーの難易度はかなり低いと感じました(メンバーの職業編成によっては難しく感じることもあろうかと思います)。

他方、クリア後のダンジョンについては、やり込みが前提となっているためかなりの高難易度となっています(パーティーメンバーがLv99前提のようなボスもいます)。

 

総評

友達と一緒に冒険できるというシステムは当時としてはかなり画期的だったかと思いますが、中身については他のナンバリングと比較すると全体的にイマイチであると感じてしまいました(あくまでドラクエシリーズ内での比較であり、他のRPGと比較して面白くなかったわけではありません)。

メインストーリークリア後のダンジョンややり込み要素が豊富である点は嬉しいですが、個人的にはもう少しメインストーリーに重点を置いて作りこんでほしかったと思うところであります。せめて、従来のナンバリングで裏ボスがストーリーの内容を補完する役割を果たしていたように、今作でもクリア後の要素もメインストーリーと関連し、メインストーリーを補完するような構成になっていれば評価はまた違ったものとなっていたかもしれません。

 

巷ではリメイクを期待する声も挙がっているようですが、今作はまぁ…厳しいのではないでしょうか…

 

全体的にかなり辛口な評価とはなりましたが、何よりハードがDSでちょっとした時間にベッドでゴロゴロしながら遊べるため、今後も少しずつ遊んでいきたいと思います(せめて歴代の魔王をすべて倒すくらいは)。

 

ここまで本記事を読んでいただきまして本当にありがとうございました。

また次回のレビューでお会いしましょう!

 

【追記 2023/06/07】

最近はひたすらはぐれメタル相手にレベル上げと宝の地図攻略をしていますが、筆者がもともと高難易度ゲー、作業ゲーが好きなこともあり、メインストーリークリア時に想像していた以上にハマっていて自分でも驚いています。

クリア後の要素については、あまりRPGを遊んでいるという感覚はないため純粋にRPGが好きな方が楽しめるかは分かりませんが、やり込みが好きな方や高難易度のボスに挑戦してみたい方にはオススメできるかもしれません。